徹底分析、九大六本松跡地再開発
JR九州が全力で進めたきた再開発による複合ビルが開業した。
場所は福岡市中央区の九州大学六本松キャンパスの跡地だ。新しく誕生したビルそのものこそ今後の地域経済発展に貢献する存在であるが、名門九州大学のキャンパス跡地であるという点も、ステータスとしては特筆してよいことではないだろうか。
とかく建設においては、以前そこに何があったかは常に意識されることである。
「六本松蔦屋書店」「福岡市科学館」といった店舗や施設の顔ぶれは、知の宝庫である九大と重なるものがないだろうか。また、九大自体の九大法科大学院も同じくこの場所である。来訪者にとっては知っていて訪れるのとそうでないのとでは、楽しさ甲斐が違ってくるものである。
元キャンパスだからこその広大な敷地
年間360万人の来訪を期待している福岡市科学館を含めたこの敷地、キャンパス跡地全体ではなんと6.5ヘクタールを誇る。JR九州はこの中の2.1ヘクタールを獲得し、開発を進めてきた。分譲マンション、科学館だけでなく、裁判所、検察庁、福岡県弁護士会館もこの地に集結するという計画だ。
一時的な需要ではなく、年間を通して継続的に人の来訪が絶えることのない施設を集めて隣り合わせることは、集客の戦略としてはシンプル且つベストであるといえる。
また、これだけの数を集めることができるのは広大な敷地あればこそ。さすがは大学キャンパス跡地である。
愛着ある福岡を見渡す。高層棟住宅型有料老人ホーム
全国の老人ホームがリアルに抱えている問題点は、人生の後半をどう幸せに施設で過ごしてもらえるか、という点である。多くの高齢者は、これまでと環境が変わることを好まない。できることなら、これまでと同じように落ち着ける住まい、生きてきた地域の風景と人に囲まれて過ごしたいものではないだろうか。
これらを踏まえて、本複合ビルで注目したい点は、高層棟に住宅型有料老人ホームが入ることだ。多くの高齢者は、老人ホームの選択をとるにしても、これまでの住まいと近しい環境を選ぶ傾向にある。しかし、そこが快適でなければ意味はない。
本再開発と共に用意された高層棟老人ホームは、長らく愛してきた福岡を一望しながら、快適な日々を送れるように計画された。
また、福岡を支えてきてくれた高齢の方々への、感謝の気持ちを込めたプレゼントにも思える。
ハードからソフトへのシフト
昨今は「ハードではなくソフト時代」といわれるのは何も特定の業界に限ることではない。あらゆるジャンルの店舗を集結させてワンストップの利便性やシナジー効果を発揮する六本松の開発もまた、ソフトを意識した計画といえる。
「ここに来れば、ここに居れば、何も困らない」
独自に考えたキャッチフレーズだが、あながち外れてないはずだ。
ソフトは常に更新と改善が行われるものだ。この考えが六本松に活かされるとすれば、今も未来も楽しみは膨らむ一方である。
科学館はこどもたちの勉強の場、学びの六本松はいまも健在だ!